torii sakiko



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ああ、もう、農業辞めたいな〜という出来事が続いている夫への声の掛け方が、連続過ぎてもはやわからなくなっているわたし。雇われている訳ではないから、辞めてもお客様以外誰の迷惑にもならないのだけれど、自分が辛くなる。自営業の厳しさをひしひしと感じる。まあ、そんなことを口走っても辞めるつもりはないし、辛さなど気の持ちようだと知っていて、秋の収穫が済むまで耐えられたら保育園に入園前の息子と首の座った娘との一度しかない楽しい冬がやって来るのが見えている。しかしあと三年は、わたしを一人分の労働力と捉えず、夫は一人で何ヘクタールも管理しなければならず言葉だけを掛け続けることになる。これはお互いとてもモヤモヤする。作業していないわたしが苦労して動いている夫に偉そうにしなければいけない場面もある。
そんなことを考えながら娘を寝かしつけ、息子も寝かしつけ、食事の作り置きに精を出す。茄子、万願寺とうがらし、ズッキーニ、きゅうり、トマト、ジャガイモ、玉ねぎ。夏だ。
「音楽なんて辞めてやる!」と当時付き合っていた彼に言った自分を思い出して馬鹿馬鹿しい。音楽は辞める辞めないではないし、音楽を辞める宣言ほど人に迷惑をかけない事象はない。大きな経験をくれる子らと、毎年学びのある田畑と、同じ方向を見られる夫が居て、大変だけれど幸せだな。ほら気の持ちようだ、と思った。