torii sakiko



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臨月の散歩 五日目

誰もいない道を白州を眺めながら歩いていると、あの工場で掘った採水の幾つもの大きな穴は今後どうなるのだろうと心配になります。それでも掘って掘ってペットボトルに詰められた天然水は、水筒を忘れた日にはコンビニで買いそうになってしまうし、都内に住んでいた頃には時々お世話になっていたので批判できません。美味しくない水道水の地域にお住まいの方や乳児のミルクが必要な方は大きなボトルを何本買ってでも側に置いておきたいだろうし、この辺りは線量がかなり低いらしいのでその点気にする場合も安心と思えば採水の穴くらい仕方がないことなのでしょう。
白州の反対側、山の斜面の木は切り倒されすっかりはげ山になっています。こちらは雪の降る季節が終わればきっとあっという間にソーラーパネルが設置されます。引越し前に新宿で女二人お別れ会をしていた居酒屋で偶然隣席にいたお医者さん集団に「今度小淵沢にソーラーを作るんですよ」と教えていただいたのが五月、十一月には正に仰っていた場所に出来上がり「医者の集団が建てたらしい」と噂が流れていたので次のはげ山も間違いなさそうです。ソーラーパネルを作るエネルギーとそのソーラーパネルが壊れるまでに生み出せるエネルギーがどれほどなのかわたしにはわからないので、お医者さんが出したお金で電気が作られ電力会社に売られた後何処か、特に都内を照らすのであれば、こちらも木が切られる云々など仕方のないことと割り切るまでです。
此処は西側で海もない山梨の山奥ですが、日本の為にも東京近郊が協力又は犠牲になる他ないと示されているのが良くわかります。しかし見なくて良い事ばかり見えてしまうのはつらく、このままでは子も育てられない気がするのでそろそろ去る時かなと考えています。今より少し人が多く少し便利で少し騒がしく大自然も都会も見えない地域が今のわたしには合っているのではないだろうかと思います。戦わず逃げることを悪とせず一時の親子の時間を楽しむことを認めてほしいのです。
予定日より少し早く、二月七日に第一子男児を出産しました。痛みの混乱の中確かに誕生した我が子を我が子として受け入れるまでに数日かかり、一週間が過ぎようやく家族三人と一匹(猫)の形態を意識出来るまでになりました。(子どもを抱き部屋を移動するのに足元に猫がまとわりついていると‘ちっちゃい子クラブ’の代表になったような気分です。)
産後の体が大方回復する頃、三ヶ月後には新作のリリースも決定し、音楽に対してもまた向き合って行けそうな気がしています。
皆様 Facebook、Twitter、メールなどで沢山の祝福のお言葉ありがとうございました。今後は子どもも、よろしくお願い致します。